京都市中京区越後町に位置する町家を改修し海外在住の芸術家の拠点とするためのプロジェクト。
敷地は六角通に面しており、堀川通と油小路通の間の多くの路地や小路に囲まれた地区にある。通りにではなく路地に面した家も多いなか、偶然にもこの家の通り庭は六角通り向かいの細い路地の延長線上に位置していた。
そこで、この計画では、通り庭を分散していた既存の間仕切り壁を撤去し北側の通りから奥庭までの動線を一直線に繋ぎ、光と風が抜ける通り土間とした。奥の庭は作業場へと続き、東隣の路地と鉄扉で繋がる。これらの周辺環境のみちの空間体験を建築内部にも引き込むことで「町」と「家」の境界のようなものを取り除こうと考えた。
「町」の中に「家」があるのではなく、「家」の中でも「町」の存在や空気を感じることができるようなことを意識した。通り土間沿いに設けられた鉄製の梯子状フレームは、間仕切り壁を撤去した既存の木造に対しての水平耐力を補う柔らかい構造補強として屋根まで達している。 この梯子状フレームに既存の床板の古材を自由に配置することで違い棚として使うこともできる。
伝統的な京都の町家は、外に対し閉じて別世界を作り出しているがこの建築では、周辺の道と一続きとなった路地奥のような「町」と「家」が混じりあった新しい空間の在り方を提案した。