京都に根ざした優れたデザインを発掘

陰もまた灯りの効用
照明器具を通して
日本の精神文化を
問い直す

和びデザイン

 〒603-8801 京都市北区西賀茂下庄田町4-33
 TEL:075・493・2941/FAX:075・493・2941

日本の美意識は陰影を重んじる。日本人は昔から自然の光を障子や簾でやわらげ、ひさしをとって影をつくり出し、光と対立することなく、うまく暮らしに取り入れてきた。何もかもくっきりと照らしだすのではなく、ほのかな、あいまいな、柔らかさを好んだ。陰は闇ではない。そこには密やかな安息や、秘めごとや、情緒があった。一方、工場の照明として考案された蛍光灯。作業性を重視してすべてを均一に照らし出すただの照明、灯りではないと、和びデザイン代表水野美代子は言う。彼女は暮らしをすべて同じルックスで照らし出す必要はないと言う。気分を落ち着け、広がり感を生むほのかな灯りがあってよい、と。灯りはものを照らすだけではない。陰をつくることもまた灯りの大切な役割である。大手電器メーカーで仕事をしていた彼女は、照明の、明るさや器具そのもののデザインより、光のあり方や陰影の大切さに気づいていた。ただ明るくすればよい、ということに疑問を覚え、自分で「灯り」といえるものをつくり出す。要は使い分けることが大切なのだ。作業する部屋は蛍光灯でよい。食事をする部屋や寝室には白熱灯のやさしい光を。勉強部屋には、机は蛍光灯、部屋の隅に白熱灯をひとつ。それだけで目にも、精神にもからだにも安らぎが与えられる。光にも癒しの力があるのだ。和びデザインの灯りは、そんな光の作用をきちんと理解した上で今でいうライトセラピー的な考え方で製作されている。照らすだけが目的でない灯り。灯すことで存在価値を持つ照明器具。それらはあたたかさをひとつひとつ灯していくようなやさしい光を放っている。そのものだけでなく、周りの空間を美しく、穏やかに浮かび上がらせ、また静かに眠らせる。生きていくために何が必要かを真剣に選択しなければいけないこの時代にあって、和びデザイン水野美代子がつくり出す灯りは、生き方や暮らし方も含めて現代人に問いかけている。

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写真右:和と洋を融合させた空間の演出
写真左上:玄関先を演出する灯り
写真左下:和びデザインギャラリー(一部)