京都に根ざした優れたデザインを発掘

takai.jpg

高井一郎
京都市立芸術大学教授
'96 Made in KYOTO 京都デザイン優品審査委員会 委員長

審査講評

 昨年度を越える商品が出品されたことからも、本事業が、回を重ねることにより各企業に定着してきたことがうかがえる。
 また、ライフスタイルの多様化や利用者のニーズの高まりにつれて、従来、デザインという要素があまり意識されなかった分野においてもその活用が認識され、これまでにはなかったジャンルの商品も見受けられて、選定事業の継続した実施の重要性を再認識したところである。
 出品された商品全体の印象としては、商品分野別に於いてレベルに差があり、デザイナーを本格的に活用したことにより、より良い商品づくりが可能となったものも数多くあったように思える。
 他方、特に工芸分野の出品の中には、必要以上にデザインを意識しすぎ、かえってそのイメージを悪くしているものもあり、もっと日常の作品のスタイルを表に出した方が良かったのではと思われるものもあった。
 そこで、選定された商品について見てみると、シンプルでしっかりとした構成の上に、京都らしい「形」を印象づけるものがいくつかあり、しかも、一般の生活者が求めることができる価格となっていたものが、かなり多く見られた。これは、京都の企業が、高度な技術の追求に加えて、利用者の側に立った製品開発をめざしていることの現れであり、本選定の趣旨にも適合するものである。
 日本の産業は、大量生産から多品種少量生産へと変化する傾向を指摘されながら、いまだに出口が見えない状態とも判断されるが、京都の産業もハイテクとクラフトの二極化の状況にあり、将来を模索中であるといえる。しかし、本選定事業を通して産業形態の新しい可能性が示されているようにも思われる。勿論、「京都デザイン優品」が日本の感性を代表する商品であることが、期待されるのはいうまでもない。

審査委員

池田  毅 (社)日本パッケージデザイン協会理事副理事長
河北 秀也 (株)日本ベリエールアートセンター代表
坂下  清 シャープ(株)顧問
曽呂利忠男 (株)阪急友の会取締役
高井 一郎 京都市立芸術大学教授
高橋 公子 日本女子大学教授
本郷大田子 (社)京都デザイン協会理事長
宮島 典男 松屋銀座本店デザインコレクション
森岡 茂勝 兵庫教育大学教授
森山 明子 日経BP社にっけいでざいん編集長

ご協力いただいた推薦委員

荒川 祥子 スペースki主宰
小川 長楽 陶芸家
恩地  惇 (株)GK京都取締役副社長、京都工芸繊維大学講師
門脇 英純 マーケッター、成安造形短期大学講師
川人 一郎 (社)京都府物産協会会長、(株)川人象嵌代表取締役
谷川  隆 (株)日商社取締役営業本部長
津田佐兵衛 京都物産出品協会会長、(株)井筒八ツ橋本舗代表取締役
中西まゆみ (協)京都クラフトセンター理事
中村 隆一 京都市立芸術大学教授
野田 伸三 京都伝統産業青年会相談役
原  里江 グラフィックデザイナー
久谷 政樹 京都芸術短期大学教授
増山 和夫 京都工芸繊維大学工芸学部助教授
松川 恵一 プランナー、(株)エニアックインターナショナル代表取締役
元橋 一裕 (株)フェイム企画営業課長
大和 文昭 京朋(株)企画室室長
若林 広幸 建築家
(順不同・敬称略、役職は委員委嘱時のもの)